電線管の種類と選び方:PF管、CD管、VE管の使い分け
電気配線を安全かつ効率的に行う上で欠かせないのが「電線管」です。電線管は、電線を物理的な損傷から保護し、感電や火災のリスクを低減する重要な役割を担っています。しかし、一口に電線管と言っても、その種類は様々で、それぞれ特徴や用途が異なります。
今回は、特に住宅や店舗などで一般的に使用される「PF管」「CD管」「VE管」に焦点を当て、それぞれの特徴、メリット・デメリット、そして正しい選び方について詳しく解説します。
電線管とは?その役割と重要性
電線管は、電気ケーブルや電線を内部に通して保護するための筒状の部材です。主な役割は以下の通りです。
- 電線の保護: 外部からの衝撃、水、粉塵、化学物質などから電線を守り、損傷を防ぎます。
- 感電防止: 電線が露出することを防ぎ、不意の接触による感電事故を防止します。
- 火災防止: ショートや漏電による発熱から周囲の可燃物への引火を防ぎ、火災のリスクを低減します。
- 配線の整理: 複数の電線をまとめて収容することで、配線を整然とさせ、見た目を良くします。
- 増設・変更の容易化: 後から電線を増設したり、交換したりする際に、管を通っていることで作業が容易になります。
主要な電線管の種類と特徴
1. PF管(Pre-fabricated Flexible Conduit):汎用性の高い波付管
PF管は、Pre-Fabricated Flexible Conduit(事前加工済み可とう電線管)の略で、合成樹脂製の波付管です。難燃性が特徴で、自己消火性があります。
特徴:
- 柔軟性(可とう性)が高い: 曲げやすく、狭い場所や曲がりくねった場所への配線に適しています。
- 難燃性: 万が一の火災時にも燃え広がりにくい性質を持ちます。
- PF単層波付管とPF二層波付管がある: 二層管の方がより耐衝撃性に優れます。
- 色: 主にベージュやグレーなど。
メリット:
- 施工性が非常に良い。
- ある程度の保護性能と難燃性を兼ね備えるため、幅広い場所で使用できる。
- 比較的軽量で運搬・施工が容易。
デメリット:
- CD管と比較してコストがやや高い。
- 管の内部に結露が発生しやすい場合がある。
主な用途:
露出配管、コンクリート埋設、隠蔽配管(壁や天井裏)、機械配線など、屋内外問わず広く使用されます。
2. CD管(Combined Duct):コンクリート埋設に特化
CD管は、Combined Duct(複合ダクト)の略で、合成樹脂製の波付管です。PF管と見た目は似ていますが、難燃性がない点が大きな違いです。
特徴:
- 柔軟性(可とう性)が高い: PF管同様、曲げやすいです。
- 難燃性なし: 火災時に燃え広がってしまうため、露出での使用はできません。
- 色: オレンジ色が一般的。これは「コンクリート埋設専用」であることを示すサインです。
メリット:
- PF管よりも安価。
- コンクリート埋設において優れた施工性を持つ。
デメリット:
- 難燃性がないため、露出配管や木造家屋の壁内など、火災リスクのある場所での使用は原則不可。必ず不燃材に埋設する必要があります。
主な用途:
コンクリート埋設専用です。建物の基礎や壁、床など、コンクリート内に埋め込んで使用します。
3. VE管(Vinyl Electric Conduit):露出配管の定番
VE管は、Vinyl Electric Conduit(硬質ビニル電線管)の略で、硬質の合成樹脂製直管です。
特徴:
- 硬質: 柔軟性がなく、まっすぐな棒状です。
- 難燃性: 火災時に燃え広がりにくい性質を持ちます。
- 耐衝撃性・耐候性に優れる: 外部からの衝撃や、紫外線などの影響を受けにくいです。
- 色: 主にアイボリーやグレーなど。
メリット:
- 外観が整然とし、露出配管に適している。
- 耐久性が高く、長期間の使用に耐える。
- 屋外での使用も可能。
デメリット:
- 曲げるには専用の工具(ヒートガンなど)で加熱するか、専用のボックスや曲がりコネクタを使用する必要があるため、施工に手間がかかる。
- PF管やCD管に比べて、スペースを取る場合がある。
主な用途:
露出配管(工場、倉庫、店舗、屋外など)で最も一般的に使用されます。コンクリート埋設にも使用できます。
電線管の正しい選び方
電線管を選ぶ際は、以下のポイントを考慮しましょう。
設置場所と環境:
- コンクリート埋設: 基本的にCD管を選びます。難燃性が必要な場合はPF管も選択肢になります。
- 露出配管(屋内・屋外): VE管が最適です。PF管も使用可能ですが、見た目の整然さや耐久性ではVE管に軍配が上がります。
- 隠蔽配管(壁内、天井裏など): 柔軟性があり施工しやすいPF管が適しています。
- 耐水性や耐薬品性: 特定の環境下では、より高い保護性能を持つ電線管を選ぶ必要があります。
必要な電線の本数と太さ:
電線管のサイズ(内径)は、収容する電線の本数と太さに応じて選びます。電線管内の電線の占有率は、将来的な増設も考慮し、30%程度に抑えるのが目安です。これにより、電線引き込み作業が容易になり、発熱のリスクも低減できます。
施工性:
- 曲がりが多い場所や狭い場所では、柔軟性の高いPF管やCD管が有利です。
- まっすぐな配管が多く、見た目を重視する場所では、硬質のVE管が適しています。
コスト:
- 予算に限りがある場合、CD管はコンクリート埋設専用であれば最も安価な選択肢となります。
安全への配慮:DIYでの電線管工事
DIYで電線管の配線を行う際は、以下の点に注意してください。
- 資格の有無: 屋内配線など、電気工事士の資格が必要な作業があります。無資格での電気工事は法律で禁止されており、大変危険です。必ず有資格者または専門業者に依頼しましょう。
- 適切な工具の使用: 電線管を切断したり、曲げたりするには専用の工具が必要です。
- 接続部の防水・防塵: 屋外や水気のある場所では、接続部からの水や粉塵の侵入を防ぐため、適切な防水・防塵対策を施しましょう。
- 電線の種類との整合性: 電線管に通す電線が、その管の保護性能に適しているか確認しましょう。
まとめ
電線管は、目に見えない場所で私たちの電気インフラを支える重要な存在です。PF管、CD管、VE管それぞれに異なる特徴と最適な用途があります。これらの違いを理解し、設置場所や環境、配線する電線の種類に合わせて適切な電線管を選ぶことで、安全で信頼性の高い電気配線を実現できます。
DIYで簡単な配線に挑戦する際も、必ず安全第一で、不安な点は専門家に相談することを強くお勧めします。適切な電線管選びと安全な施工で、快適な電気環境を整えましょう。